2002/03/17登録
アメリカ・マジソン在住のぴろ中村さんから、中国語教室で行われた 「餃子教室」の模様が届きました。
ここはアメリカです。多くは白人や黒人でみんな英語を話しているというのは、 一昔前の話。麦当労やバーガーキングの公用語はスペイン語?と思うほど、フ ァーストフードの店員はメキシカンが多いですし、多くの中華料理店では中国 語が飛び交っています。レストランに限らず、街を歩いていてもスペイン語や 中国語はしばしば耳に入ってきます。アメリカで英語が上手であるに越したこ とはありませんので、英語の向上に努めるのが大事だというのは当然なのです が、上記のような事実を目の当たりにすると、スペイン語や中国語がかなりグ ローバルな言語であることが改めてよくわかります。そんなわけから日本で自 習していた中国語をもう少ししっかり習ってみようと思ったりして(英語もろ くに話せないくせに)、自分の仕事している大学の中国人コミュニティが催し ている中国人学校(中国人子女の補習校として機能している)の中国人以外対 象の中国語教室に通いはじめたわけです。ちなみにアメリカ人以外の生徒は私 一人です。アメリカにまで来て他国語を勉強しようというアホな外国人はあま りいないのでしょう。まあ、授業も英語を中心に行われて、ディスカッション も英語でしなければいけないから、私にとっては中国語も英語も勉強になって、 一石二鳥です。
前置きが長くなってしまいました。その中国語教室にてみんなで餃子を作ろ うという発案が老師からありまして、皆が賛同したわけです。餃子が中華料理 の代表格であるのはアメリカでもいうまでもありませんが、日本料理の「寿司」 と同様に世界レベルの有名料理の宿命か、ここアメリカではいわゆる本場の餃 子をお目にかかったことがありません。アメリカでの餃子の詳細は「タムタム さん」のホームページ (http://member.nifty.ne.jp/tam2/index.htm)を参考にして いただければ幸いですが、分厚い皮に肉ばかりが入っており、かつ甘いタレを かけて食べるのはアメリカ人の味覚に合わせたゆえであり、「日本の餃子」と 同様、これはあくまでも「アメリカの餃子」であります。
このように、1)餃子は知っているけど本物は知らない、従って2)中国人 が中国で普通に食べているものを味わってもらいたい、3)春節が近かったこ ともあり、餃子の持つスピリチュアルな部分を知ってもらいたい、など老師は 餃子を通じて、中国のいろんな側面を理解してもらいたいと考えたようです。 そんなわけで、普段の授業以上に気合いが入っています。ちなみに老師は揚子 江沿岸の出身だそうです。
写真1 | 写真2 |
大学の施設の一室で行ったため(写真1)、そこで粉を練るわけにはいかず、 老師は予め練った塊を用意してきてくださいました。ちょうど、餡となる豚の 挽肉にみじん切りのネギとショウガを混ぜているところです。このあとに左側 に見える中国醤油と塩で餡の味を整えました(写真2)。今回は薬味以外に野 菜は入れていませんが、白菜や韮を入れたりすることがあるとの説明がありま した。ただ韮という野菜の存在すら知らない人も多い、アメリカ人にいきなり 韮餃子ってのは、ちと強烈すぎるかもしれません。そんなわけで、今回は猪肉 餃子。
写真3 |
ここで助っ人登場、この中国語学校の上課と下課を知らせるベルを鳴らすお じさんです。英語がまったく話せないので、この人と話すことが授業以上に私 にとっての中国語の練習です。話を戻しまして、練った粉はしばらく時間が経 っておりますから、この方がもう一度打ち直しました。山東省の太山付近の出 身だそうです。老師は山東省は中国の中でも餃子が有名なところの一つで、こ の方は自分なんかよりも粉を作るのは上手だと説明していました。確かに見事 な手さばきです(写真3)。
ところで、参加者の中にベジタリアンがいたので、ベジタリアン用の餡も予 め老師が用意してきました。一応、今回の方は卵が大丈夫なようなので、ゴマ 油で炒めた卵をみじん切りにしてキクラゲ、シイタケ、みじん切りのネギを混 ぜたものを塩で味を整え、使用しました。卵はゴマ油で炒めるのがフレーバー を良くするためのミソのようです。卵がダメなら、揚げた豆腐を使えといって いましたが、これは日本でいう厚揚げに相当するものです。さらにアメリカ人 はセロリが好きなので、セロリを使ってもいいのではないかと、言っていまし た。
写真4 | 写真5 |
粉の塊は、皮10枚分くらいの分量で細長く伸ばして、さらに10等分にし ていきます(写真4)。余りの分は乾燥しないように塊で残しておきます。そ れぞれ等分したものを棒で、薄く円形に整えます(写真5)。
皮ができました。みんなで包み始めます。本当は皆さんが包んでいるところ をお見せしたいのですが、顔がはっきり写っている写真ばかりなので割愛させ ていただきます。中国人以外の、我々はなかなか上手に包めません。そんな中、 老師とおじさんは見事な手つきで包んでいきます。おじさんは英語が話せない のに、とてもわかりやすい身振り手振りで皆に包み方を教えてくれます。こう いうのが「餃子を包む」ということにおけるスピリチュアルな部分なのでしょ うか。これまで私以外の生徒は英語が話せないおじさんとはまったく交流を持 とうとしなかったのですが、知らない間にみんな仲良くなっています。本当の 意味での言葉を超えた交流って、こういうことなのかもしれません。一方で我々 が作ったものは皮の合わせが甘かったりするので、老師はひとつひとつチェッ クしていきます。
そして、茹で始めです。茹でるときの注意点としては、お玉の腹で押すよう に茹でろ、ということでした。引くと尖っているところで皮を傷つけたりして しまうだから、ということです。
写真6 | 写真7 |
さて茹で上がりです。これは私たち生徒が包んだベジタリアン餃子です(写 真6)。この皿には自分らが作ったものが多いので、形が汚いです。他方、こ ちらは猪肉餃子で上の方には老師とおじさんの作ったきれいな餃子が載ってい ます(写真7)。で、皆で餃子を食べることに・・・。香酢をつけながら食べ ました。やはり水餃子には香酢です。一部の中国人はニンニクをかじりながら 食べるとの説明もありました。餡はそこそこですが、皮のなんとおいしいこと、 つやつやでぷるぷる。やはりつくりたての皮はおいしいです。餡は金を惜しま なければ、それなりの市販で良いものを手に入れることができますが、皮に限 ってはそうはいきません。こんなおいしい餃子をアメリカの地で食べられるな んて思ってもいませんでした。通りがかる中国人は皆覗いていきます。その度 に老師はちょっと食べて行けと声をかけます。
そんなわけで、アメリカの中国語教室での餃子パーティーはあっという間に 過ぎてしまいました。自分自身も、箸を上手に使えない人に使い方を教えてあ げたり、日本にも餃子があって、でも焼き餃子がポピュラーだよとか教えてあ げたりして、アジアには共通の何かがある一方で、それぞれの国で違いがあっ たりするものだって事を、特にアメリカ人に伝えることができました。 餃子を作ることは、作り方さえ知っていればどこでもできることです。また、 今回記したこと自体は餃子について認識の深い皆様方には、至極当然のことか もしれません。しかしおいしい餃子が食べられたこと以上に、餃子を皆で包む という行為自体がもたらす効果、すなわち餃子の文字の一角を成す「交」の部 分がより一層深まったような気がしました。
自分自身は母国語をまったく使えない環境であるわけだし、他のアメリカ人 生徒と交流を持つのにある程度の不自由を感じていたわけですが、餃子にその 溝を埋めてもらったという感じです。食べるだけでは見えてこない部分が見え てきた、そんな感じです。とにかく、アメリカ滞在中にこんなことが体験でき るとは思いも寄りませんでした。老師、おじさんに感謝、感謝です。
日本の大学でも、文化祭などで中国の留学生が餃子を作ってるようです。 そこで作られるのはもちろん水餃子。簡単に作れる料理にして、最も中国を代表する 料理なんですね。日本人は海外で何を紹介すれば良いのでしょうか? 寿司やてんぷらは難しいし・・・。